エジプト・アラブ首長国連邦出張報告
日時 2001年4月28日−5月7日
場所 エジプト(カイロ、ルクソール、アスワン)、UAE(ドバイ、アブダビ)
便宜供与 UAE入国時の通関
日程
4月28日
エジプト航空863便(関空−カイロ)
4月29日
午前 カイロ博物館見学
午後 ガマル・ムバラク国民民主党(NDP)中央執行委員会委員との会談
アムロ・ムーサ外務大臣との会談
夜 アデル・アブドル・アジズ観光庁長官主催ディナー
4月30日
午前 カイロ市内見学
午後 アハメド・ファシ・スルール国民会議議長との会談
ナディア・マクラム・エビード環境大臣との会談及びJICAによる
環境モニター研修プロジェクト見学
夜 エジプト外交評議会メンバーとの意見交換会
5月1日
午前 ピラミッド等見学
午後 マムドゥ・エルベルタギ観光大臣との会談
夜 エジプト航空237便でルクソールへ
5月2日
午前 ルクソール西岸見学
午後 ルクソール東岸見学
夜 エジプト観光局主催ディナー及びカルナック神殿光と音のショー見学
5月3日
午前 エジプト航空でアスワンへ
午後 アスワンハイダムなど見学
夜 エジプト航空でカイロへ
5月4日
午後 シンガポール航空427便でドバイへ
夜 ドバイ市内見学
5月5日
午前 サイード・アルタイヤDEWA(ドバイ水道電力庁)長官との会談
アーメド・フマイド・アルタイヤ情報大臣との会談
シェイク・アハメド・ビン・サイード・アルタイヤ エミレイツ航空
会長との会談
午後 シェイク・ハムダン・ビン・ザイード・アルナヤン外務担当大臣との
会談
夜 アハメッド・サイード・アルバディ ベルバディグループ会長(元閣僚)
主催ディナー
5月6日
エミレイツ航空及び日本航空でシンガポール経由帰国(5月7日朝成田着)
特記事項
今回の出張はエジプト政府の招待による。
最初の会談相手のガマル・ムバラク氏はムバラク大統領次男で、いずれエジプトの大統領になるだろうと政府関係者が口をそろえる人物。先方から今回の政府招待の最大の目的は、このガマル・ムバラク氏との会談だと念を押されたほど。カイロのアメリカン大学を出てイギリスに留学し、現在は金融界に身を置きながら、与党である国民民主党の最高幹部の一人。物腰が柔らかく、非常に丁寧に話す。身の回りの問題と国政とをどう結びつけるのか、政党として、国政レベルの問題と地域の問題とにそれぞれどう取り組んでいくのか、お互いの政党のやり方をベースに議論する。アメリカのブッシュ政権の中東和平に関する取り組みについての議論の中で、日本への期待感を強くにじませていた。
ムーサ外相は、エジプト政界での実力者であり、アラブ連盟の事務総長に就任が決まっている。中東和平において、エジプトヨルダンイニシチブを主導し、会談が設定された日は、イスラエルの外相がエジプト入りしていて、きわめて多忙な中、時間を割いていただく。中東和平や日本の中東外交についての意見交換の後、こちらが国連改革の問題に触れると、安保理改革はこの何年かでできるものではないから、まず非常任理事国を拡大すべきだと主張され、それでは日本は納得できないとやや平行線。
後任の外相は誰、とエジプトの政府関係者に聞くと、日本でも女性の外相が誕生したのだから、エジプトも次は女性でしょうと冗談が出てくる。日本の新首相、新外相への興味は大きく、とくに首相の髪型が必ず話題になる。
観光大臣、観光庁長官とは日本からの観光振興についての話になる。ルクソール行きもテロ事件以後すっかり安全であることをわかってもらいたいということで、事件のあったハトシェプスト女王の神殿や日本語でも始めた光と音のショーを中心に見学する。やはり鍵は直行便の増便と中近東を日本の旅行業界がどのように市場として捉えていくかということだろう。ルクソールはとくにヨーロッパ人にとっては、リゾート地であり、必死になって遺跡をめぐる日本人観光客とやや違ってリゾートでのんびりする中に遺跡巡りがあるという感じだ。ルクソール−アスワンを三日かけてのんびりと船でナイル川をいくというのがヨーロッパ人の楽しみらしいが、これを日本人にどうやって売り込んでいくのだろうか。
環境大臣との会談は途中からJICAによる環境モニタープログラムのための支援の継続の話に集中し、環境大臣自ら階段を駆け下りて、階下にある中央センターを案内してくださる。環境分野での日本のODAがここでは非常に高い評価を受けている。
エジプトの外交官、学者、ジャーナリストが中心になって設立された外交評議会で、二時間半に渡りディスカッション。ここでも新内閣の外交姿勢が話題になる。なぜ日本は国連の安保理に入りたがるのか、国連での行動を見てもアメリカのまねをしているだけではないか、それなら無理をしなくても良いのではないか、という意見が出される。とくに中東問題では国連決議を無視するアメリカの後押しをして、インド、パキスタンに核のことを言ってみてもそれはダブルスタンダードだという声もでる。アメリカの力で対イラン、イラクの問題に対応しながら、イスラエルよりのアメリカに批判的であり、国内の原理主義的勢力を押さえ込むにはアメリカよりと見られてはいけない中東の複雑な状況が見て取れる。特に、人口がまだまだ若いこの地域では、失業している若年層の不満に火がつくと、社会的な不安定さがあっという間に広がっていくおそれがある。日本も、この地域での経済に、石油の輸入や自動車の輸出以上の関わりを持つ必要がある。中東の石油に依存していながら、現在の日本と中東の関係の希薄さは、大きな問題と言わざるを得ない。
これでアメリカが防衛政策を見直し、二正面作戦を放棄したらどうなるのであろうか。中東のことは中東で、ということで本当にいいのか。ガマル・ムバラク氏をはじめとするブッシュ政権への不信感は本当にぬぐい去ることができるのか。中東の安全保障に日本はカネを要求されることになるのか、それとも..。
中東で今後戦争があるとすれば、石油よりも水をめぐってということになるだろうと今回も話をきいたが、中東の水をめぐる戦略が大事になってくる。日本は資本と技術を使って、水の問題から中東の問題である面ではリーダーシップを取ることができるはずだ。しかし、現実には、ヨーロッパや中国の方がこの分野でも活動的なようだ。
アラブ首長国連邦訪問は、小泉首相の所信表明演説が月曜日になったため、実質的に一日という強行軍になってしまった。水と航空便に絞って会談をお願いする。ドバイの空港はたしかにすばらしい。ハード面、ソフト面だけでなく、将来を見越してすでに拡張計画を着々と進めているところなど、日本の空港行政が研修に人を送って見習うべきだ。これだけのハブ空港がここにあるのを利用しない手はない。日本の航空会社が中近東に乗り入れをする予定がないならば、まずエミレーツ航空の関空乗り入れを一刻も早く実現させるべきだ。日本と中近東の希薄な関係の打開は、直行便が毎日中近東と日本の間を飛ぶことから始まるだろう。
UAEの人口の八割は外国人であり、低賃金の労働者も多いが、高賃金の専門職も世界各国からたくさん集まっている。残念ながら、ここの日本人は日本企業の一員として派遣され、日本の企業の看板を背負っている人が多いようだが、日本人が一人のプロとして、日本企業を離れ、国際社会のなかでやっていけるようにならないものだろうか。大勢の日本人が一人ひとりのスキルで世界各国で活躍しているという状態を創り出すことが二十一世紀の日本にとってとても大事なことだと思う。ビジネス界の野茂やイチローが、各地にどんどん誕生する事を祈りたいし、そうなるための土壌を作っていかなければならない。
ガマル・ムバラク氏やシェイク・ハムダン・ビン・ザイード・アルナヤン王子に、新世代による交流を増やしていきたい、外務省や関連省庁の会議だけでなく、政治家や経済界の若手同士が直接話し合いができる枠組みを作っていきたいと提案し、快く了解をいただく。